2023年5月21日日曜日

誤用の多い漢字クイズ 姑息の意味は?「卑怯」は間違い

 「姑息な手段をとる」の「姑息」の意味は、現在「卑怯」という意味で使われることが多いですが、本来は間違いでした。では、それ以前の意味として正しいのは以下のうちどれでしょう?

(1)その場しのぎ。一時の間に合わせ。
(2)手間のかかること。無駄の多いこと。
(3)間違い。正しくないこと。


答え:(1)その場しのぎ。一時の間に合わせ。

  「姑」は「しゅうとめ」。で、「息」がつくので「息子」として、クイズの選択肢に入れようと思いました。しかし、うまく行かず。

 元の意味では全然関係ありません。 文化庁月報 平成24年6月号(No.525)にあった「大辞林 第3版」(平成18年・三省堂)によると、" 「姑」はしばらく,「息」はやむ意"とのこと。

 また、文化庁月報によると、"「姑息」は「礼記(らいき)」(檀(だん)弓(ぐう)上)の故事にある,孔子の門人,曽子の言葉に由来"するそうです。以下がその故事。

"病床にあった曽子は,自分の寝台に,身分と合わない上等なすのこを敷いていました。お付きの童子にそのことを指摘された曽子は,息子の曽元にすのこを取り替えるよう命じます。曽元は,父の病状の重いことを考慮し,明朝,具合が良くなったらにしましょうと答えます。それに対し,曽子は,お前の愛は童子に及ばないと,次のように言いました。
 「君子の人を愛するや徳を以(もっ)てす。細人の人を愛するや姑息を以(もっ)てす。」(君子たる者は大義を損なわないように人を愛するが,度量の狭い者はその場をしのぐだけのやり方で人を愛するのだ。)
 その場にいた者たちは,曽子を抱え上げてすのこを取り替えますが,彼は間もなく亡くなってしまいました。曽子は,一時しのぎの配慮に従って生き長らえるよりは,正しいことをして死ぬ方がよいと考えたのです"

 現代人の感覚からすると「うむ、わからん」という故事。でも、当時は立派な心構えだと感じたのでしょう。時代の違いです。

文化庁 | 文化庁月報 | 連載 「言葉のQ&A」文化庁月報 平成24年6月号(No.525)
http://www.bunka.go.jp/publish/bunkachou_geppou/2012_06/series_10/series_10.html

 姑息については、「国語に関する世論調査」で聞かれています。平成12年度と"平成22年度の「国語に関する世論調査」で,「姑息な手段」という例文を挙げて,「姑息」の意味を尋ね"たというものです。
 偶然ですが、私のクイズと同じ例文で出題。まあ、一番一般的な用法ですしね。ほとんどこればっかりです。

姑息  例文:姑息な手段               平成22年 平成12年
(ア)「一時しのぎ」という意味・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15.0% 12.5%
(イ)「ひきょうな」という意味・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70.9% 69.8%
(ア)と(イ)の両方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.9% 4.7%
(ア),(イ)とは全く別の意味・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.1% 1.7%
分からない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9.2% 11.4%

 "(ア)「「一時しのぎ」という意味」を選んだ人の割合は,60歳以上で2割弱(19.5%)と,他の年代に比べて高くなって"いますので、高年齢の方がやや元の意味で使っている傾向があります。
 ただ、年代的に見ても全般に「ひきょうな」が大きく上回っていると言えるものです。年齢を問いませんね。かつては誤用であったものの、既に定着したと考えても良いと思います。