2023年5月4日木曜日

下北沢の街の本屋「B&B」の特徴とは? 毎日イベント?ビールOK?

  「街の本屋」が次々と潰れれていく中、東京・世田谷区北沢、いわゆる下北沢にある書店「B&B」は、ユニークな試みをしています。
 まず、"「B&B」とは「Book」&「Beer」の略で、本を読みながらビールが飲めるというコンセプト"です。これ、コンセプトとありますが、実際にドリンクの販売をしているというのがまず特徴です。
 その他、後述するように、毎日何らかのイベントを開催するというのもやっているようです。

ビールが飲める本屋「B&B」大盛況の秘密 アマゾンには絶対まねできない体験を提供する- 東洋経済オンライン(2014年7月10日08時00分)
http://news.infoseek.co.jp/article/toyokeizai_20140710_42074

 では、上記の記事執筆時点で、「B&B」がやっていないということはどれでしょう?

(1)店内にある本棚などの什器販売
(2)入場料の徴収
(3)ユニークな本をテーマ別に編集


答え:(2)入場料の徴収

 代官山蔦屋書店の店長、上田元治さんは「よく言われるのは、時間消費みたいなこと。この時間消費に対して、入場料をいただければいいのですが、そういうわけにはいかない。ビジネスとして成立するために、どこにおカネを落としていただくポイントを作るか、いつも悩んでいます」と言っていたそうです。
 入場料はここから取りました。たぶん代官山蔦屋書店も「B&B」もこれはやっていません。

 上記は「B&B」の人の話ではありませんでしたが、「B&B」を2年前に立ち上げた共同代表者の内沼晋太郎さんにももちろんインタビューしています。(以下、すべてカギカッコ内は内沼さんの発言)

「現状では、書籍の販売だけで小さな書店が、東京の高い家賃を払って利益を出すのは、かなりハードルが高い。だから、ほかのものと掛け算して、収益源を複数、確保することが絶対に必要でした」

 本屋さんなのに本だけではやっていけない。不思議な気がしますが、街の本屋さんが生き残るには、本以外の価値を売っていくしかないのです。

 これは単にいろいろと売りましょうという意味ではないですよ。たとえば、それはコミュニケーションなどといったものもそうです。

「イベントに参加したり、定員さんと少し話したりすると生まれる、『場にいる時間』と『コミュニケーションの総量』が大切です。これはアマゾンなどにはできない体験価値であり、リアルなお店でわざわざ物を買う価値になります」

 とはいえ、「B&B」が本以外の商品を売っているのは、冒頭で書いた通りです。そして、これとともに重要なのが、後述すると書いたイベントです。

「イベントの計画を話すと、ほぼ皆、難しいと言いましたが、決心は揺らぎませんでした。大変でしたけど、ずっと継続できています。確かに手間はかかりますが、どこの書店でもほぼ同じ本が買える中、毎日のイベントはその日、『B&B』に来ないと体験できないコンテンツであり、本を買うお客様の集客にもつながるという点で、とても意味があると思っています。今では利益もしっかり出ていて、収益の柱のひとつになっています」

 "このイベントの収益と、ドリンクの販売、店内にある本棚などの什器販売で、本業である書籍販売と合わせて収益が出るようになってい"るのこと。"この話が示すように、誰が聞いても、面倒くさそうだなあ、とか、大変そうだなあ、と思うようなアイデアにこそ、ビジネスチャンスがあります"と作者は書きます。

 また、クイズの選択肢にした「(3)ユニークな本をテーマ別に編集」はこちら。

「ほぼ本の売り上げだけに依存している一般的な書店は、収益を上げるためにジャンルごとの売り上げを比較して、売れるジャンルの棚を増やし、売れないジャンルの棚を減らしていく。たとえば外国文学の棚などは、その論理で全国の書店から減る一方なのですが、僕たちは棚で表現できる世界が狭くなっていく事態こそが、書店にとって致命的だと考えています。逆説的ですが、書店にとって大事なものを守るためには、本以外のモノも含めた、複数の収益源をバランスよく持つことが必要なのです」

 "ベストセラーに偏りがちなほかの書店とは異なり、「B&B」の本棚には、あまり一般書店では見ないようなユニークな本もテーマ別に編集されてい"るそうです。作者は「どんどん同質化していく」としていましたが、そんな本屋ならそれこそネットで買っても対して変わりありません。
 もっと極端にベストセラーを売らないことで成功した本屋もありますので、この方向性も必然性が高そうです。
 ただ、「棚作りに2倍の時間をかけても、残念ながら、いきなり2倍の売り上げが上がるわけではありません」ということで、即効性は期待できないようです。

 今の時代、本屋が潰れれていくのは当たり前ですので、その流れに逆らって成功するというのは、それだけたいへんなのでしょう。仕方ありません。