2023年6月6日火曜日

IWC脱退・商業捕鯨再開とは何だったのか? 需要低迷で若者のクジラ肉離れと若者叩き報道に反発

IWC脱退・商業捕鯨再開とは何だったのか? 需要低迷で若者のクジラ肉離れと若者叩き報道に反発


   「鯨食文化」復活の成果見えず 商業捕鯨再開1年 問われる妥当性 - SankeiBiz(サンケイビズ 2020.6.29 05:00)は、日本が国際捕鯨委員会(IWC)から脱退し、31年ぶりに商業捕鯨を再開してから2020年7月1日で1年がたつ…というタイミングでの記事。極めて異例の強硬策に打って出たものの、「若者の鯨肉離れ」で国内の「鯨食文化」復活は遠く、成果は見えにくいと書いています。
 クジラ肉を食べる習慣があったのは、かなり上の世代ですからね。ただ、若者に問題があるかのような「若者の鯨肉離れ」という表現は、一部で反発を呼んでいました。
 需要低迷には新型コロナウイルスの影響もあるという見方。ただ、そもそも調査捕鯨をやっていた頃より、今はむしろ捕獲量そのものが減っているみたいです。調査捕鯨で年2500トン前後だった国内市場への鯨肉供給量は3分の2程度に減るとの見方もあるとのこと。
 一方で、 捕鯨業者が「捕獲枠拡大が必要だ」としているのは、よくわかりませんでした。需要がない状況では捕獲枠を拡大しても仕方がない気がします。



クジラ肉需要がない一方で多額の税金、水産庁幹部が「特別扱い」と認める


  なお、気になるのは、需要が低迷する中、多額の税金が使われているということ。政府は19年度に続き20年度も、捕鯨業者支援に向けた経費として51億円を予算計上しましたが「いつまでも特別扱いできない」(水産庁幹部)との指摘もある、とされていました。これは逆に言うと、現在は特別扱いして、我々の税金を使っているということを認めた形です。
 早稲田大の真田康弘客員准教授(環境政策)は「EEZ内だけでは独立採算の操業は厳しく、公海に出れば反捕鯨国が黙っていない。八方ふさがりの状態だ」として捕鯨戦略の実効性に疑問を投げ掛けていました。
 実を言うと、もともと商業捕鯨は成り立たないのではないか?という声は、IWC脱退前から出ていたんですよね。今後クジラ肉ブームになるなどで、状況が変わる可能性はあります。ただ、今のところは、危惧した通りになっている感じです。(2020/07/01)

そもそも若者は多く食べた時期がないのに…マスコミの「若者の鯨肉離れ」報道、過去にも報道あった?


 ツイッターなどで マスコミ記事へのリンクをともなった「若者の鯨肉離れ」という表現は以前からあり、古いものは2011年後半や2012年初めに見られます。なので、私はてっきりマスコミが過去にそう報道したのだと思って紹介しようと思っていましたが、どうやら違うようです。ツイートした人や2ちゃんねるまとめサイトがおもしろくするためにそう書いただけで、本文では見られない表現でした。
 例えば、「若者の鯨肉離れ」と結び付けられていた止まらぬ鯨肉離れ 値段高く、在庫10年で約3倍  :日本経済新聞(2011/12/18)という記事。 本文に若者の話はなく、<日本の消費者の鯨肉離れが続いている。値段が高く食卓に上る機会が減り、この10年で在庫量は3倍近くに増えた>といった話だけでした。
 記事では、28歳の人の「鯨は食べたことがない。売っていること自体知らなかった」というコメントを載せており、むしろ「若者は最初から食べていない」という印象を与えています。2012年1月12日に東京新聞も同様の<鯨肉在庫10年前の3倍>という記事(リンク切れ)を書いていますが、過去ログを確認したところ、やはり若者については触れていませんでした。
 なお、日経新聞の記事の方では、従来の4倍超の約32億円を国が投入していることについて、農林水産省の検討委員会で専門家から「費用対効果を考えると、縮小・中止すべきだ」との意見が出たことも記載。現在投入している予算の51億円はこれよりさらに多いのですから、税金の使い方として疑問が残ると言わざるを得ないでしょう。